ミャンマー人の特定活動が3万人超!「フリータービザ」と批判されるが、入管も何もしていなかったわけではない
2026/10/26
こんにちは。外国人のビザと雇用問題に取り組む行政書士の森久保です。
先週は10月22日に甲府、翌23日には塩尻へ、それぞれ日帰りで出張してきました。
2日連続での長距離移動となり、さすがに体力の限界を迎えてしまいました・・・。
そんなわけで、ブログの更新も少々間隔が空いてしまいましたが、無理をして体調を崩しても仕方ありませんので、ぼちぼち再開していこうと思います。
さて、そんな中、日本経済新聞にちょっと気になる記事が掲載されていました。
「特例で日本在留のミャンマー人3万人 『フリータービザ』化に課題」
という記事です。
2021年のミャンマー軍事クーデターを受け、日本政府が設けた緊急避難措置によって日本に滞在するミャンマー人が増え続け、2025年末には33,688人に達したというものです。
このニュースに対し、SNSでは、
「こんなこと、制度を始める前からわかっていたじゃないか!」
という趣旨の意見も見られました。
確かに、そういう指摘が出てくるのも理解できます。
というのも、ミャンマー人への緊急避難措置で認められる
「特定活動(1年・就労可)」
は、一般的な就労資格とは少々性格が異なるからです。
例えば・・・
「技術・人文知識・国際業務」であれば、従事できる業務内容に制限があります。
「特定技能」であれば、対象となる産業分野や受入れ企業などについて、さまざまな要件があります。
ところが、ミャンマー人向けの「特定活動(1年・就労可)」では、
こうした職種や勤務先についての制限が基本的にありません。
つまり、比較的自由に仕事を選ぶことができるわけです。
こうした特徴から「フリータービザ」などと呼ばれることもあるようです。
ただし、これは正式な在留資格の名称ではありません。
(※ちなみに私たちの業界では「フリータービザ」ではなく「ミャンマー特活」と呼ばれることが多いです。)
さて、ここで一つ指摘しておきたいことがあります。
実は入管も、こうした制度の誤用・濫用について、
何も対策していなかったわけではないのです。
2024年10月1日から、特定活動への変更に関する取扱いを厳しくしています。
特に問題となったのが、技能実習生のケースです。
従来から、技能実習を正常に修了したミャンマー人については、緊急避難措置として「特定活動(1年・就労可)」への変更が認められていました。
しかし、技能実習の途中で実習をやめ、より自由に働ける特定活動への変更を希望するケースも出てきたわけです。
そこで入管は、技能実習を修了していないミャンマー人について、取扱いを変更しました。
具体的には、本人の責任によらず実習継続が困難になった場合でも、監理団体等が実習先の変更に必要な措置を講じたにもかかわらず、新しい実習先が見つからなかったことなどが求められます。
また、本人の責任で実習を修了せず、在留期間が残っている場合には、この緊急避難措置による変更を認めない取扱いとなりました。
つまり、
「技能実習を途中でやめれば、自由に働ける特定活動へ変更できる」
というような利用を難しくしたわけです。
ちなみに、入管庁の公式資料にも、緊急避難措置が誤用・濫用的に利用されている事例が散見されたことを、運用変更の理由として明記しています。
★出入国在留管理庁「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/10_00036.html
このように、国も制度の問題点を認識し、対策を講じてきたわけです。
ただし、この措置そのものが廃止されたわけではありません。
技能実習を正常に修了した人などについては、引き続き1年・就労可の特定活動への変更申請が可能です。
(でも実務上は・・・ 就労はできけるど28時間までとなることも最近は多いような・・・・)
さて、ここでもう一つ触れておきたいことがあります。
実は、こうした人道的な緊急避難措置は、ミャンマー人だけに認められているわけではありません。
例えば、ウクライナです。
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、多数のウクライナ人が国外へ避難しました。
日本政府も、ウクライナから避難してきた人々に対して特別な措置を設けています。
具体的には、避難目的で日本に「短期滞在」の在留資格で入国したウクライナ人などについて、原則として就労可能な「特定活動(1年)」への変更申請を認めるというものです。
そして、ウクライナの情勢が改善されていないと認められる場合には、在留期間の更新申請も可能とされています。
★出入国在留管理庁「在留資格『特定活動(1年)』への変更許可申請について」
https://www.moj.go.jp/isa/support/fresc/01_00252.html
もちろん、ミャンマー人向けの措置とウクライナ避難民向けの措置では、対象者や制度の運用に違いがあります。
しかし、いずれも本国の情勢不安を理由として、日本での在留や就労を認める人道的な措置であるという点では共通しています。
したがって、今回のミャンマー人に対する特定活動だけを取り上げて、単純に外国人労働者の受入れ拡大策として批判するのは、少々違うように思います。
そもそも、帰国したくても安全に帰国できない人がいるわけです。
そうした人々を保護すること自体には、十分な理由があります。
一方で、ここが難しいところなのですが・・・。
ミャンマーの緊急避難措置が始まったのは2021年5月。
それからすでに5年以上が経過しています・・・
もともとは緊急的な措置として始まった制度が、長期的な在留を支える仕組みにもなっているわけです。
もちろん、在留者数が増えたことだけで、不正利用が増えていると決めつけることはできません。
実際に帰国できない人が、それだけ多い可能性もあるからです。
しかし、緊急避難措置が長期化した場合、いつまで同じ仕組みを続けるのかという問題は残ります。
また、本来の人道的な保護という目的とは異なる形で制度が利用されていないか、適切に確認する必要もあるでしょう。
保護が必要な人は守る。しかし、制度の誤用・濫用は防ぐ。
この両立が重要なのだと思います。
今回のニュースについても、単に「最初からこうなることはわかっていた」と片付けてしまうのではなく、これまで国が講じてきた対策と、今後必要になる制度設計を分けて考える必要があるのではないでしょうか。
引き続き、入管の動向に注目していきたいと思います。
森久保行政書士事務所
住所 : 東京都千代田区神田東紺屋町30
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